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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
居廻の者は誰謂うとなく加茂川の横町を、根岸の馬車新道と称えて、それの狭められるために、豆腐屋油屋など、荷のある輩は通行をしない位であるが、今日は日曜故か、もう晩方であるためか、内も外も人少なげに森として、土塀の屋根、樹の蔭などには、二ツ三ツ蚊の声が聞えた。
されば敷石を鳴す穿物に音立てて、五ツ紋の青年はつかつかとその格子戸の前。
ちょうどここへ立った時分に、今開けた門の、からからと鳴る、ばねつきの鈴の音が止んで、あたかも可し、玄関へ書生が取次に顕れて、あえてものを言うまでもない。
黙って、坐って、手を支いて、顔を見て、澄して控える。
青年は格子戸を半ば引いたままで、慇懃に小腰を屈め、
「御免下さいまし。」
「はい。」
「ええ、お友達、御免下さいまし、御当家、」と極って切口上で言出した。調子もおかしく、その蝙蝠傘を脇挟んだ様子、朝夕立入る在来の男女とは、太く行方を異にする、案ずるに蓋し北海道あたりから先生の名を慕って来た者だろうと、取次は瞶めたのである。
青年はますます鄭重、
「いかがでございましょうか、お友達、御当家先生様にお目通が出来ますでございましょうか。