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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
すなわち傍なる一閑張の机、ここで書見をするとも見えず、帙入の歌の集、蒔絵の巻莨入、銀の吸殻落などを並べてある中の呼鈴をとんと強く、あと二ツを軽く、三ツ押すと、チン、リンリンリン――と鳴る、ばたばたと急いで来て、
「はい、」といって顔を出した以前の小間使、先刻意を了したと見えて二本ばかり団扇をそれへ差出す折から、縁側に跫音して、奥の方から近いたが、やがてこの座敷の前の縁、庭樹を籠めて何となく、隣家のでもあるか蚊遣の煙の薄りと夏の夕を染めたる中へ、紗であろう、被布を召した白髪を切下げの媼、見るから気高い御老体。
それともつかぬ状で座敷を見入ったが、
「御客様かい、貴方御免なさいよ。」といって座に着いた。
「灯をね、」と顔をさし寄せて、令夫人は低声でいう。
夕暮の徒然、老母も期せずしてこの処に会したので、あえて音楽に関して弟子に対する他は、面会日が水曜と触の出た令夫人が、次の室に居合せたり、奥深く世を避けておわす老母が縁側に来合せたりするのが、謝礼金五千疋を持参の者に対する鴨川家の家風ではない。青年は蓋し期せずして拝顔を得たのであった。
「お初に。どちらの、」