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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页

青空文庫

「じゃあ御免を被って遣つけますぜ。」と素頂天にぞんざいな口を切って、袂の下を潜らすと、脱いだ羽織を前へ廻して、臆面もなく、あなた方の鼎に坐った真中で、裏返しにしてふわりと拡げた。言語道断、腕まくりで膝を立て、

「借もんだからね、皺にしちゃあ動きが取れませんや、」と、切上った眦に筋を集めてニヤリと笑った。

余りの思懸けなさに、鴨川の一家、座にある三人、呆気に取られる隙もなく、とばかりに目を見合せた。中にも才子はその衝に当ったから、風が止んだようにじっとする。

青年は身を斜めに、肩を揺って才子に突懸け、

「煽ぎねえ、へ、奇代な風だ、心持の可い日和だい。遠慮をするこたあねえぜ。こう聞きねえ、実はその団扇使を待ってたんだ。様あ見やがれ、」というと、嶮のある目を屹と見据え、今なお座中に横わって、墨色も鮮に、五千疋とある奉書包に集めた瞳を、人指指の尖で三方へ突き廻し、

「誰を煽いだつもりだよ、五千疋のお使者が御紋服の旦那だと思うと、憚んながら違います。目先の見えねえ奴等じゃあねえか、何だと思ってやあがるんだ。手前ことはね、おい、御当所日本橋は人形町通よ、赤煉瓦の学校裏、紋床に役介になっている下剃の愛吉てえ、しがねえものよ。