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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
逞しい鼠色の馬の面が、小鼻を動かし、呼吸を吹いて正面に門の処に並んでいるので、お夏は日傘を楯にしてあなたこなた隙間を差覗くがごとくにしたが進みかねた。
(どなたか、ちょいと、私、用があるんですから。)
声を懸けると三人が三人、三体の羅漢のように、御者台の上と下に仏頂面を並べたのが、じろりと見て、中にも薄髯のある一体が、
(用があるなら勝手口へ廻れ、)とつッけんどんに陀羅尼音でいったのである。
対手は馬二匹と男が三人、はじめから気を呑まれてお夏は、
(はい、)といって、小戻をして、黒塀の板戸の角、鴨川勝手口とある処へ引返したが、何となくその首を垂れた。
されば誰憚るというではないが、戸を開けるのも極めて内端じゃあったけれども、これがまた台所の板の間に足を踏伸ばし、口を開けて眦を垂れていた、八ツさがりの飯炊の耳には恐しく響いたので、(騒々しいじゃあないか、誰だよ。)と頓興に、驚かされた腹立紛れ。勝手口から入るものには、この位なことをいって差支えないのであろう。
(お休みの処を、済みません、)と丁寧に小腰を屈めて挨拶をしたが、うっかり禁句とは心着かなかった。飯炊は面を膨らして、