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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页

青空文庫

随分派手を尽したのであるから、以前に較べてこの頃の不如意に、したくても出来ない師家への義理、紫の風呂敷包の中には、ただ清書と詠草の綴じたのが入っているばかりの仕誼、わけを知ってるだけに、ひがみもあれば気が怯けるのに、目の前に異彩を放つ山河内の姫が馬車に積んで来た一件物、お夏はまた一倍肩身が狭くなるのであった。

されば気の挫けた声も弱く、

(お暑うございます、)と手をついて挨拶して、ものもいってくれぬ師匠夫婦が気色のほどを伺うと、蛍の祟りがあるのでもないから、因縁事でもあるまいけれども、才子はその時も手にしていた深草形の団扇を膝の真中あたりで、じっと凝視めて黙っていたが、顔を上げると、何と思ったか、半白という上目づかいに、お夏の面をじろりと見て、

(ああ、暑うございますこと、勝山さんあなたお客様を煽いで下さい、私はちょいとあちらへ参りますから、)と畳へ団扇を辷らして、お夏の身近う突いて寄越し、(失礼を、)と姫にいって、そのままふいと座を立った。

お夏は聞正すまでもなく、疑うまでもない、明かに、ちょうど自分が居る背後から煽ぎ参らせよ、といわれたのである。