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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
私あ上りまして見ましたがね、お夏さんが行水を使って、立膝でこう浴衣の袖で襟を拭いてると、女中がね、背後で団扇車ってやつをくるくるとやってました、洗髪だし、色は白し、」
と酔眼をって苦い顔で、
「庭の植木からは雫が溢れます、袂だの、裾だの、その風でそよそよして、ぞッとするような美しさ、ほんとうに深川中の涼しいのを一人で引受けていなさるようで、見る者も悪汗が引込んだんです。
幾ら相場が狂ったって、日本橋から馬車に乗って、上野を歩で、道端の井戸で身体を洗って、蟋蟀の巣へ入ってさ、山出しにけんつくを喰って、不景気な。この温気に何と、薄いものにしろ襦袢と合して三枚も襲ねている、茄った阿魔女を煽がせられようとは思やしません、私はじめ夢の様でさ、胸気じゃアありませんか。」
「可いや、まあそんなに怒るな、傍に居る者が怯気々々する。」
「御免なさいまし。つい、」といって愛吉は苦笑した。
金之助はやや更り、
「何しろ以前は大した栄耀をしたものらしい。」と自ら語り頷いて且つ愛吉の面を見た。
「じゃあお前は先からの知己か、紋床に居て近所だから絵草紙屋と懇意になったというんじゃあないのかね。