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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
横ッちょに曲って懸ってるんですが、私あ過日中から気になってならないんで、直すか直すかと思ってるとやっぱり横ッちょだ。私の内は貧乏だけれど姉さんが居るから暖簾が汚れませんや、御新造が居なさらねえとそれだもの困っちまう、)と高慢なことをいいながら、背伸をして、西洋造の扉の上に、鶏卵色の壁にかかった塗板を真直に懸直し、そのまま閉ってる扉を開けて、小腰を屈めて診察所へ入った。
密閉した暗室の前に椅子が五脚ばかり並んで、それへ掛けたのが一人、男が一人、向うの寝台の上に胸を開けて仰向けになっている。若先生光起は、結城の袷に博多の帯、黒八丈の襟を襲ねて少し裄短に着た、上には糸織藍微塵の羽織平打の胸紐、上靴は引掛け、これに靴足袋を穿いているのは、蓋し宅診が済むと直ちに洋服に変って、手車で病院へ駆けつけようという早手廻。
卓子を傍に椅子に倚って、一個の貴夫人と対向いで居た。卓子に相対して、薬局の硝子窓を背後に、かの白の上服を着たのと、いま一人洋服を着けた少年と、処方帳をずばと左右に繰広げ、筆に墨汁を含ませつつ控えたり。
薬の薫は床に染み、窓を圧して、謂うべからざる冷静の趣。