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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
百年目だと思った私あ、板戸も壁も突破る勢で横ッ飛びに表の方へ刎ね出したんで、どしばたというのが地の底へ刻み込むように聞えるばかり。あッとも、きゃッとも声なんぞはしませんでした。門口へ出ると道も空も土器色にばッとなって、処々段々にこうその隈取って血が流れたように見えましたっけ。
その中をね、あっちこっち三四人、大きな蟻の影法師が映ったようにまるで酔ッぱらいの足つきで、ひょろひょろしながら歩行いてましたが、奇代なもんでございますね、道なら三町ばかり伸したと思うと、洪と火の粉が浴びせて来ました。鶏は脇の処で恐しい羽ばたきをしますね、私あその煽で宙へ上りそうで足も地につきませんや。背後の方でも、前途の方でも、その時分にようようワッという人声が陰に籠って聞えました。やがて私の身は何の事はない渦いて来る人間の浪の中に巻込まれてしまいました。
右左透間のねえ混雑なんで、そいつあ皆火事場の方へ寄せるんでしょう、私あ向うへ抜けようとするんでしょう。
突当るやら、蹌踉けるやら、目も口も開かねえんで、何でえ! 田舎ものが神田の祭にはぐれやしめえし、人ごみにまごまごする事あねえ、火事に逃げるたあ何の事だと、おされて剣突を食う癇癪まぎれに、立直して引返そうとする、と気が着きました。