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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
「お前、寂しいのか。」
淋しいのかと謂って、少しく抱きあげて、牙のごとく鋭き嘴にお夏は頬の触らぬばかり、
「私だって店に独で居るんだもの、我儘でございますよ。」
くるくると動かす蔵人の目は光って、ものに動ずる風情あり。
「母様は塩梅が悪いし、寝ていらっしゃるじゃありませんか、人がね、宵啼をするッて忌がります。不可いよ、厭だよ、幾度言って聞かせるか知れないのに、何故言うことをお聞きでない。」
と品ある目で屹と見たが、傾けている片頬から顔の色が和らいで、
「灯を見せてあげようね、宵ッ張たらないのだもの。」
店の真中へ二足三足、あかり前へ、お夏は釣洋燈の下に立ち寄った。新版ものの表紙、錦絵の三枚続、二枚合せ、一枚もの、就中飼鶏がぱっと色彩を放って、金、銀、翠、紅、紫、あらゆる色のここに相応ずる中に、墨絵に肖たる立姿は、一際水が垂りそうである。
「お祭だわねえ、灯がついて賑かだろう。」
飼鶏は心あるごとくい洋燈をとみこう見た。楯をも砕くべきその蹴爪は、いたいたしげもなくお夏の襟にかかっている。
「あっちを御覧、綺麗じゃあないか、音羽屋だの、成田屋だの、片市……おやおや誰かの姫君様といったような方がいらっしゃる、いやに澄してさ、高慢な風じゃあないか、お前知ってるかい、何が合点さ、」