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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
吹いてそのまま寂寞。
この名残であろう、枝に結えた賽ころは一ツくるりと廻って、三が出て、柳の葉がほろりと落ちた、途端に高く脚をあげて、軍鶏は店前をとッとッと歩行き出した。
お夏は片手をついて腰をかけて、土間なる駒下駄の上へ一片の雪かとばかり爪先をかけて、うっかりとなった。フトその飼鶏を念頭から奪い去られたのであろう、もの思をする人の常として、こうは思いがけずしばしば心を失うのである。
その間に軍鶏の健脚は、猫の額のごとき店頭を往復することをもって満足が出来なくなった。
かつて黒旋風愛吉をして、お夏の一諾を重ぜしめ、火事のあかりの水のほとりで、夢現の境に誘った希代の逸物は、制する者の無きに乗じて、何と思ったか細溝を一跨ぎに脊伸びをして高々と跨ぎ越して、小路の真中へずっと出て、あたかも西側を離れて、これから東側へ廻ろうとして、狭い町の屋根と屋根との中空へ来た、月の下にすっくとこそ。
土蔵の前に集った一団の人の驚きは推するに余りある次第であろう。
渠等が額を集め、鼻を合せ、呼吸をはずませて、あたかも魔界から最後の戦を宣告されたように呶々している、忌むべき宵啼の本体が、十間とは間を措かず忽然として顕れたのであったから。