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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
「なぜ、そこに、いたの?」
あやかさんが叫んだ。
「さア。そのナゼに説明を与えてしまうと、犯人にバカされるかも知れません。まだまだ何も仮定してはいけないのです。案外、犯人は、そのとき室内にいなかったかも知れませんや」
「いなかったという仮定が成立する根拠もありますか」
と、一馬。
「有りますとも。実に、彼、犯人氏はテクニシャンでさ。かねてモロモロのテクニックを御用意の様子もあります。尤も、そう考えてもいけないのかも知れません。つまり、彼氏、案外、無用意なのかも知れませんや。万事始めのうちは当らず、さわらず、ヌキサシならぬ奴だけ信じる以外に手がないですよ。目下ヌキサシならぬことと云えば、王仁さんと珠緒さんが殺されたということだけでさア」
すると一馬がふと思いつめたような顔をあげて、
「僕も、おとといの、王仁の殺された夜は、暁方の三時ごろまで起きて仕事をしていたのだ。あやかが僕の部屋へ逃げこんできて、僕の寝台へねてしまってから、僕はふと起きて仕事をはじめた。去年からフランス象徴詩についてエッセイを書いているが、却々はかどらないのでね。すると、たぶん、一時ごろだと思うけれども、隣室へ鍵をさしこむ音がきこえた。