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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

そっちの方には鉱泉のでる部落があり、鉱泉宿が一軒あるが、鉱泉宿といっても、よその土地から客のくるような名の知れたものではなくて、いわば部落の共同湯にすぎないのだった。

私はふと気がついた。あの鉱泉宿には雑貨、売薬などを売っている。戦争前に仕入れた品物が買手がなくて今もって売れ残りの品物があり、戦争中もカルモチンがあった。私はあのころは酒さえのめば睡くなるタチで眠り薬の必要はなかったが、近ごろは不眠症で、こまっている。村へきたついでに、ぜひとも鉱泉宿で昔のカルモチンの有無をたしかめて買いたいものだと予定をたてていたものだから、丹後の立去ったキッカケで、思いだした。そこで私も別れて丹後のあとを追ったが、三町も行くと丹後が戻ってきた。

「どうしたい? 鉱泉宿へ行くんじゃなかったのか」

「ああ。鉱泉宿へ行ったって、仕様がないさ。じゃア、失敬」

そこから宿までは四五町あった。ここには部落が十五軒しかないそうだ。

鉱泉宿の主人は四十前後の、なかなか抜け目のないところがある青白いインテリ顔の男で、私の用件をきくと、

「そうさね。東京もんは抜け目がないから、ワシらのところまで目当にして、買いだしに来たのが、時々あるからね。