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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

この正体は隠すことができないぜ。さア、見たり、見たり」

木ベエは酔いに青ざめて殺気立ち、彼自身ギラギラ悪鬼的な沈んだ目を光らせていたが、まさしく海老塚の目はその比ではなかった。私は始めからその経過を見て気づいていたが、彼は怒りにぶるぶるふるえ、逆上的な昂奮から、まさしくギラギラと狂人の光を眼に宿していた。それは、たしかに、とびかかって人を殺すことのできるその一瞬の目の光である。八ツ裂きにもすることができる、ひねり殺すこともできる、狂人の行いうる全てのことを行いうる狂暴無比な光であった。

婦人連は息をのんだ。

木ベエは海老塚をハッタと睨んだ。

「彼はまさしく変質者、精神分裂というのだか、妄想狂というのだか、ともかく気違いの一人ですよ。自分は純潔、正義派だと思っているのだ。加代子さんのお乳をいじり、さる御婦人とゴジッコンを重ね、下枝さんにそれとなくお乳をいじるチャンスをつくらせようとしながらですよ。自分の為すことに気がつかないのが、先ず変質者、気違いの所以じゃないか。そして、ただ、他人の不純不潔を妄想する、彼の潔癖はつまり狂人の病症ですよ。皆さん、そうではないか」