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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

海老塚の目は益々燃えた。それは極点まで見ひらかれ、もう、どうする術もなく、そして彼は、言葉も、身動きも、すべてが失われている故に、今や、にわかに、唐突に全てのことが可能であり、何かが突発しそうな様子に見えた。

そのとき、ひきずる跫音がして、お由良婆さまが、諸井看護婦に手をとられながら、はいってきた。

「千草がどこにもおりませんよ。どうしたのでしょう。もしや皆さんに御心当りはございませんか」

一座に別の恐怖が走った。

「そんなバカな。まさか殺されやしないだろう」

ピカ一が大声で喚いた。

「お婆さん、安心しな。あの子はサカリがついてるのさ。婆さんの前だけれども、あの子ときては、満身これ性慾じゃないか」

一座はそのまま沈黙した。誰も、つづいて物を言いだす者がない。

すると諸井看護婦が、水死人が水の中から物言うような静かな沈んだ声で、

「そうです。千草さんはアイビキにおでかけでした」

「なんですって? じゃア、あなたは知っていらしたの」

お由良婆さまの呆気にとられた視線も、諸井看護婦の冷たい顔には、とりつく島がなかった。

「千草さんはアイビキの紙片をお受けとりです。