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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

私ゃ見かけによらず心臓が弱い方なんだから、薄気味わるくって、こんなジャングルみたいな山径を歩くのは、やりきれませんな」

「一通り探したんですか」

「まア大体、人間の通れるような径の上だけはね。三輪神社から三輪池までは歩いてきましたよ」

私たち三人は一しょに三輪神社の裏手へまわって密林の山を見あげた。熊笹がはびこり、雑草が、蔓が、絡みもつれて、陰鬱きわまる暗さと静かさがはりつめている。

「まるで、いかにも人が殺されています、というようなジャングルじゃないですか。え、矢代さん。この中へ踏みこめたって、私ゃ、いやですよ、まったく」

そう言いながら、神山は地上に何物か認めて立ちどまった。

「オヤ、何だろう」

神山は拾いあげた。

「こりゃ、いけない。こりゃ、御婦人のルージュだよ。どうやら、おいでなすったかな。ア、ア、そこの雑草が踏みにじられた跡のようじゃないか。するてえと、こりゃア」

五六歩すすむと、ハンドバッグが投げすててあり、中のものが散乱している。十歩ほどすすむと、大木の根の陰に、千草さんが俯伏して寝ているように殺されている。フロシキで目隠しして、その目隠しの上から女の腰紐のようなもので締め殺されていた。