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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

一馬がそれにつづいて、

「そうでした。ですから僕は和尚さんは寺にいるものだと思ったのです。それでいったん戻りましたが、和尚さんに用があって寺へ行った。いくら声をかけても答える者がないので三十分ほど本堂の前に待っていました。あきらめて戻ってくると裏門で矢代に会って、座敷へ来てみると、そこに和尚さんが来ておられたというわけです」

「なるほど分りました。それで歌川さんが草林寺におられる間、誰かに会われましたか」

「あそこは道から引っこんでおりますから、人ッ子一人見かけません。つまり、僕にはアリバイがないわけです」

「丹後さんと矢代さんは各々単独で戻られた。そのほかの人見さん、三宅さん、巨勢さんは御一緒ですね」

「いいえ、僕が又、単独です」と木ベエが冷めたい顔をふりあげた。

「人見と巨勢さんはブナ林の径へ曲りましたが、僕は裏道を通って、つまり内海の大八車が通ったという道の方を歩いたわけです」

「そのとき内海さんに会われたのですね」

「どう致しまして。全然、人ッ子一人見かけません。あっちの道は山の密林の間ばかり曲りくねって畑も田もないところですから、村の人の往来もなかったです」