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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

私は見かけによらぬ読書家ですから、昨夜も寝ころんで読書していましたよ。土居さんの怒鳴り声が衰えて終りをつげたのが、零時十八分でした。そのときソッと扉をあけて、のぞいてみたら、土居画伯はまさに居眠りつつ扉へもたせた背中がズリ落ちようとしているところでしたよ」

カングリ警部はうなずいた。

「神山さんは弁護士の御職業柄、カンドコロに時間の注意が行きとどいていらっしゃる。おかげで大変よく分りますよ。奥様の寝室の扉は、うまいぐあいに廊下を見通していますから、あの扉にもたれていると、皆さんの廊下の出入が全部見晴しのわけですが、土居さん、どなたが出入したか、話していただけませんか」

ピカ一は、いささかクスグッたそうな顔付で、てれていたが、

「どうもね、それは拙者は昨夜人の出入のたびに怒鳴りつけたり追いかけたりしたかも知れないけれど、どうも、よく覚えていないのでね。然しなんだね、扉にもたれて、尻もちついてから後は、もうみんな寝てしまったのか、一人も出入りがなかったようだな。待てよ」

彼は考えこんだが、思いだせない様子であった。

「土居さん御自身は扉の前から一度も離れませんでしたか」