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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

ピカ一は頭をかいて、

「小便ぐらいに行ったかも知れねえなア。どうも全然記憶がないから」

「イヤ、絶対に扉の前から動きません」

神山東洋がキッパリ言いきった。

「なぜなら、同じ位置で怒鳴りたてている声が五秒ととぎれたことがなかったからです。それは誰よりも奥様におききしたらハッキリしやしませんか。まさか奥様は虎のホーコーを尻めに悠々と眠ってしまわれたわけはないでしょうからな」

あやかさんはその言葉を真顔でうけて、

「ええ、私は全部覚えております。十二時すぎるまで、私の扉の前で虎の叫び声がとぎれた時はありませんでしたわ。私は虎がこの山へ現れて以来、主人の寝室でねむる例にしておりましたが、昨夜に限って私の寝室へかけこみましたの。なぜなら、私の習慣で、私のお部屋では扉の鍵を扉の内側にさしこみ放しておるものですから、とっさに鍵をかけることができるという目安がついておりましたから。ですから、幸い一足ちがいで、うまく滑りこむように鍵をかけることができましたのよ。日頃の不精のおかげのようなものでしたわ」

そのとき、神山東洋がきいた。

「犯人は窓からはいったのではないですかな」