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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

千草さんに会っておれば、もっとおくれて戻る筈で、又、千草さんと一緒に戻ってくる筈であろう。

「諸井看護婦が読まされたというアイビキの紙はあるのかい」

「それを探しているのですが、千草さんの所持品には見当らないのですよ」

私は諸井という女が虫が好かないのである。思いあがったところがあり、まことにキザな理知ヅラである。あやかさんが頼みをうけて千草さんに渡したというまでは、私は千草さんの芝居でなければ、諸井看護婦のトリックだと思っていた。

珠緒さんが殺された枕元のコップと水差にモルヒネが投入されていたというが、モルヒネは海老塚医院も秘密に所蔵している由であるし、実は多門老人がモヒ中毒で、この屋敷にはモルヒネがイントクされているのであった。

ある日、巨勢博士と私は多門老人の書斎にまねかれた。談たまたま事件の話にうつった時、ちょうどビタミンの注射に諸井看護婦が居合わしたものだから、私はわざとイヤガラセに、

「諸井さんは千草さんの生前もそうだが珠緒さんの生前にも最後に会われた人であり、おまけに珠緒さんの枕元のコップと水差にモルヒネが投入されていたそうだが、これを近代探偵小説の流儀で云うと、看護婦にモルヒネ、あんまり有りそうなことだから、そんなバカな手口を残す筈はないということになる。