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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「いけませんや、そんな」と巨勢博士はてれて打消した。

「着眼の妙という奴ほど、真相を偽り易いものはありませんや。当人がいい気になるだけ、救われがたいもんでさア。ねえ、矢代先生、文学もそうじゃないですか」

「それは政治もそんなものさ。然し、巨勢さん、これは非常にメンミツに計画された犯罪でしょうな。ただ私が疑るのは、内海さんの場合じゃね。土居さんが目を光らせていたという危険の際に、殺さなければならなかった、そこに謎があるのだね。たぶん、あの日でなければならなかった謎があるに相違ない。その謎がとけると、事件の一角に糸口がつく、そんなものじゃありませんかな」

「その謎をどんな風にお考えになっていますか」

多門老人は答えなかった。そこで私が、

「それはたぶん、内海は犯人を見たからでしょう。然し、千草さんが殺されたという事実については知らないから、まだ犯人を疑ることを知らないのじゃありませんか。だから、その夜のうちに内海の息の根をとめることが是が非でも必要だった」

「危急存亡じゃね。それにしても危い橋を渡ったものじゃ」

そのとき、巨勢博士が奇妙なことを言った。

「一番危くなかったのかも知れませんや」