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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

八丁鼻はアタピン女史と一緒であった。

「御足労、あいすみません」

八丁鼻は武骨だけれども却々礼儀正しいところがあって、ペコンと一つ頭を下げた。

「今日はひとつ、文壇の事情についてお話をうかがいたいのですが、望月王仁さんは敵がたくさんあったそうですね」

「どんな敵ですか」

「文学上の敵ですよ。望月さんがなくなられると、どんな方々が喜びますか」

「先ず誰ひとり喜ばぬ者はありませんな。作家仲間に毛嫌いされていましたよ。無礼粗雑な奴ですからな。もとより私も大喜びです」

「文士はみんなヤキモチヤキでしょう」

とアタピン女史がキンキン喚くように突撃してきた。

「あなたは自信がないんでしょう。才能が足りないからよ。だからヤキモチヤキなのね。あさましい」

「アタマへピンとこないからね。まったく不幸せの至りですよ。私たちは、たしかに頭が悪いんだな」

「望月さんがなくなると、あなたの原稿の売れ口がますのね」

「御説の通りです」

「ところで、矢代さん、文学上の、つまり才能の嫉妬からですな、人を殺すということが考えられますか」

「それは考えられますよ。いろいろの可能性の中でも、そんなことは極めて有りそうなことじゃありませんか。