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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

まさしくこのとき、この部屋の鳩時計が七時を告げた。

海老塚医師がもったいぶった身振りで、

「皆さん、ここに奥田利根吉郎先生を御紹介申し上げます。論語の研究家と申しますよりも、最も真摯誠実な論語の実践家であり、苦行者であり、聖者であります」

聖人は蒼ざめた顔をビリビリとふるわせながら、何か必死の面持で一同を見すくめながら、

「人はパンのためにのみ生きるものではないと申しますが」

「オイオイ、それは論語の言葉じゃないぜ。ノコノコと怖れげもなく現れやがって、和洋セッチュウの安説法てえのがあるかい。気違い猿め。やせても枯れても芸術家は生一本の物自体という奴なんだ。レデーメードと違うんだから、気違い猿は引っこめ。酒の肴にもならねえぞ」

とピカ一が腹を立てて、青筋をたてて、睨みつけた。

人見小六がそれをひきとって、

「まったく不愉快千万じゃないか。おい、海老塚君、我々の集りに君自身が顔をだすさえ無役、不快であるというのに、我々の同意もまたず、未知の人をつれてくるとは何事だい。我々は君の家の客人ではないのだぜ。論語は礼をといているが、論語の先生、そもそも出現の方法からして、論語を裏切ること甚しいじゃないか」