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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

一馬も立腹して、

「海老塚さん、この集りの主人である私が、その人物の侵入を許しませんから、連れ去って下さい。あなたも当分この集りには出席なさらぬ方がよろしいようです」

はからざる一馬の語気に虚をつかれて、海老塚は唇をビクビクふるわせながら、しばらく言葉を失っていたが、皮肉屋の丹後が私の予想通りに、ゆっくりと、尤もらしい静かな声で、

「論語聖人の御説法なんて、東京じゃアきけないことだね。礼儀などという常識論にこだわることはないさ。礼の常識をわきまえざるところに、この聖人の偉さがあるかも知れないよ。いまだ真価を究めざるうちに、向うみずに追っ払うというのは、芸能人の心構に反するところじゃないか」

「いい加減にしろ。お前は型通りのことしか言えない奴だな。自分の好き嫌いも分らずに、新らしそうな型でばっかり物を言ってやがる。だからお前の文学は、いつまでたってもニセモノなんだ。王仁とお前とじゃアお月様とスッポン以上の開きがあらアな」

ピカ一は突ッ立ち上って、聖人の肩へ両手をかけて、グルリと後向きに廻して、

「サア、歩いた。家宅侵入罪という法律にも反しているよ。当局に訴えずにカンベンしてあげるから、ドロンと消えて、なくなりなさい。