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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

サア、オイチ、ニ、オイチ、ニ」

この聖人は昔は王仁にひとたまりもなくノバされて海老塚医院のお世話になったこともあり、見るからに、王仁に貫禄劣らざる豪傑の出現に、益々ただもう蒼ざめて二の句がつげず、ふらふらと押しだされて、食堂の扉から外へ突きとばされてしまった。海老塚もそのあとを追って、食堂の扉から一緒に去って見えなくなった。

食卓の用意ができた。

「まったく、気違い医者にも手こずるけれども、丹後というニセモノ芸術家には、イヤな思いをさせられるな。本人はいい気になっていやがるから、鼻もちならないこと。ねえ、加代子さん。いい名前だな、それにあなたはいかにも心の筋が通った感じだなア。丹後みたいなニセモノに比べると、ものの本当の姿を見とどけている深さがうかがわれるな。さア、お嬢さん、私はあなたの隣席へ坐らせていただきますよ。私はね、あなたのような心の正しい深いお方は、からかったり、くどいたり致しませんから。あなたの深い静かな心に映った物ごとの四方山ばなしをきかせて頂こうじゃありませんか」

と、ピカ一は、加代子さんに椅子をすすめて、その隣りへ自分が坐った。おかげで京子は加代子さんから離れてしまった。