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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

混乱した人々の思いが気配となって動いている。カングリ警部の全身に気魄がこもった。

「諸井さん。あなたは死人に口がないということを勘定に入れていますね」

諸井看護婦は冷然とうなずいて、

「そうかも知れません。そのために、私の言葉が信用されないという馬鹿らしさを」

「お加代さんは何をしていましたか」

「お水をのみにきたのだと仰言ってました。私が冷蔵庫に鮎を入れているうちに、出て行かれたのです。私が調理場をでると、お加代さまは、この広間の椅子にかけて読書しておられました。矢代さんの奥様を訪ねたけれど、おひるねのようだから、と仰言っていました」

「私もこの広間でお加代さまを見かけましたの。二時四十分ごろでしたわ。やっぱり読書していらしたのです」

と胡蝶さんが言葉をはさんだ。

もう十一時ちかい時間になっていた。カングリ警部は苛々して、

「それでは、神山さん、職業柄、あなたは行届いた観察眼をお持ちのようですから、夕食の様子について、おきかせ下さい」

「そうですか。それでは皆さんを代表して、私から申上げましょう」

さすがに場馴れたものであった。先刻まではまだ左程ではなかったけれども、こうして指名をうけて一座を代表したとなると、まるで貫禄が違ってくる。