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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

この隠し子の存在にはお梶さまも相当煩悶した由であるが、自分の結婚前ということが、ともかく納得の手蔓ではあったらしい。私はよく知らないが、母親の女中さんはお梶さまが来てから首をくくって死んだとか、そういうことがあって、お梶さまの加代子さんへの呪いは下火になったのだそうだ。この病気には食物が大切だからと特別の滋養物なども心がけてやり、服装なども人前へでて恥しくないものを心がけるという風で、諸井看護婦にも、お加代には気をつけて、と言い含めたそうだ。

だから加代子さんに微熱があると看護婦を病院へやらず、附添わせる。南雲一松翁さんやお由良婆さまが相当の変調でも、いいから病院へ行ってきなさい。忙しいでしょう、と言う。諸井看護婦が又、冷めたい女で、俗な情愛の稀薄な人だから、愚痴っぽくメソメソとヒステリーじみた南雲一族が嫌いで、よく面倒見てやらない。その呪いがお梶さまに集まり凝っていたわけだ。

お梶さまは危篤の時、死の直前のもはや畳をむしる苦悶の力すらも衰えかけたとき、みんな居る、そうきいた。そしてそれらの言葉は殆どよく聞きとることが不可能だったが、南雲一家の者はあっちへ行ってくれという意味のことを言ったようであった。