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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

然しそれは明確に聞きとることができなかったので、お梶さまの枕もとに一番近く坐っていた珠緒さんも、実際はどう言ったのか、分りゃしないわ、と言っているそうである。

「この脅迫状は全くバカげたものさ。こっちは身に覚えがないことだから、手紙の文句の方は、僕は気にかけていない。村の疎開者かなんか、暇で、ヒネクれた奴のイタズラだろうよ。僕が君をたよりにしているのは、これは僕のあまりひどい我がままだけれども、君よりも実のところは、どうしてもお京さんが必要なんで」

酒の酔いもさめたように、彼の顔色は青ざめてきた。

「余分の註釈はよしにして、いきなり言ってしまうが、僕は昔から、加代子を熱愛していた。然し、ともかく兄と妹なんだから、僕は色情的なものを、極めて精神的に変形し、いたわり、聖母を敬慕するような、そんな風なやさしい心をもっていたのだ。困ったことに、加代子の方が僕以上に僕を愛していたんだね、その上に、君、あれぐらい毎日何かしら読書しているくせに、非常識な話だけれども、兄の僕を恋人として愛している、兄と妹は恋をしちゃいけないのだと言ってきかせても、どうして? 世間の人がそうだって、どうして私達がそうでなければならないの? 向う見ずだよ。