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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

もう、七十六の老齢ですから」

カングリ警部は遺言の写しをとり、片倉清次郎の住所をきいて立ち去ったが、遺言状の発見によって、加代子さんの殺害に有力な動機が見出されたということに関心を深めたことは察せられた。

ところが警部の一行と行き違いに、片倉老人は家人につきそわれ、車にゆられて、主家へ弔問に来たのである。もう歩行にも殆ど困難な病体だった。

彼は主人の遺骸の前にぬかずいて、ものの十分は顔をあげることができなかった。

警部の一行は行先を知って引返し、遺骸のある部屋で、片倉老人の話をきいたが、一馬と私もその席にいた。

「当家に仕えて何年ほどになりますか」

「私の十六の年ですから、当年七十六、六十年の大昔になりますなア。そのころは当家の財産も時価で十万か十二三万、わずかそれだけの額で、やっぱりその頃から屈指の長者でありました。時世の移りかわり、又、当節の大変動にも驚きますが、敗戦とあれば、これも当然でありましょうか」

片倉老人は病み衰えていたが、頭はシッカリしており、何らの学歴もなかったけれども、着実な識見を具えているのが察せられた。

警部の態度も、自然に改っていた。