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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「お加代さんの母親が自殺したということは事実ですか」

「左様です」

片倉老人は目をとじて、念仏でも呟くように口の中で言った。カングリ警部は意外にも深いいたわりをこめて老人を見つめながら、

「片倉さん、むろん我々も警察や役場の古い記録をしらべて表面のことはとっくに理解しているのです。一生の誠意と愛を捧げられた主家の秘密について、お年寄に無慈悲な告白を強いるなどとは、まことに心ない業で、我ながら鬼のようだと思いますが、然し、片倉さん、今やこうして当家に続出している奇怪な犯罪について思いを致すとき、その無慈悲を敢てしても、ものごとの真相を突きとめなければ、犯人の姿も亦、つきとめることが出来ないのですよ。まことに御無理と思いますが、決して他言は致しません。当家の古い傷についても公人としては一切きかないことに致しますから、まげて真相を打ちあけていただきたいのです」

こう云ってカングリ警部は老人を見た。老人の眼に穏かな理解の色が静かにこもって、警部の心を受けいれたようであった。

「お加代さんの母親は、自殺ではなく、他殺であったということが、一部の老人に言い伝えられているのですが、これは、事実でしょうか」