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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

この御方は二十の時にもう結婚して、二人の子供が残されたのじゃが、二人の遺児の弟に当るのが、ただ今、当村に医者をしている海老塚晃二という仁ですのじゃ。この仁は、旦那様の孫に当る御仁じゃ。その兄の玄太郎という御方は三年前に三児を遺して亡くなられた。三児のカシラはまだ十一ぐらいの幼少で、当村から十二里ほどのM村に未亡人が百姓をして育てておられる。今はもう当家と無縁で、別に仕送りも致してはおりませぬ」

カングリ警部も二の句のつげぬていたらくである。一馬はまったく蒼ざめてしまった。

「旦那様の隠し子を海老塚へ養子にひきとらせたとき、この海老塚という仁はまことに温厚な仁で、よく約束をまもって、歌川多門様の種であるということは露ほどももらしませぬ。よって、籍は実子としてありまするから、サギはやる、ユスリはやる、遂には強盗まで働いたほどのタチのよからぬ人物が、死に至るまで歌川多門様の長子であったということを知りませなんだのです。その遺児の玄太郎と晃二のうち、晃二は秀才でもありましたところから、無医村の医者に仕立てるという名目で学費をだしてやりましたが、これとても、孫であるということは、知るよしもありませなんだ。