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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

間の悪いことに、その当時、旦那様の秘書をして当家におり、私と共に現場へかけつけたのが、神山東洋という悪漢ですのじゃ」

我々の驚きは深刻であった。私や警部にまして、一馬の驚きはひどかった。彼は蒼ざめ、全身が石のようにかたまっていた。

警部は同情をあらわして、うなずいて、

「よく分りました。それで、神山東洋という人が歌川家をゆすっていたという風説も嘘ではなかったのですな」

片倉老人は一分間ほど休息とでもいうように沈黙していたが、

「神山東洋のユスリには、もう一つ、当家の秘密があるのですじゃ。このことは、若旦那様も御存知ないかも知れませぬ。このような事件がなければ、全てを私の棺に閉じてもらさぬつもりでおりましたのじゃが、何がさて、今度の騒ぎは気がかりのことじゃ。私が本日、でましたのも、弔問のほかに、実はこのことを若旦那様に申し上げよう為でしたのです」

老人は又、休息した。

「旦那様がまだ二十のとき、東京の遊学先に宿の女中とたわむれて生れた子供がありましたのです。この子供を遠縁にあたる海老塚の家へ養子にひきとらせ、女の方とは手を切りましたが、この子供が長ずるにつれて、まことにタチのよくない御方で、サギはやる、ユスリはやる、遂には強盗をはたらいて、獄死いたしたのです。