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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

あの顔は偽ることのできないものだ。こういう真実というものは、嘘発見器よりも確かだぜ」

「そうですかなア。先生方の文学的方法というものは銘々得手勝手の独断的なもので、嘘発見器みたいな正確なものじゃアなさそうだがなア。歌川先生がこのことを本当に今まで知らなかったなんて、すくなくとも神山東洋氏が知るほどのことを、一家の相続人が知らないなんて、おかしいなア。神山東洋氏が知ってなきゃア、納得もできるけれど」

一馬はまったく気を悪くした。彼は正直にムッとして、

「僕は本当に知りませんよ。相続人といったって、僕なんかは、まったく、ほかに相続人がないから相続するというだけのこと。それに僕のオヤジという人物は、お前の代にはお前の勝手にやるがいい、人間死んでしまえば墓なんかもどうでもいいや、というぐらい、虚無に徹したところのある人物でしたよ。だから旧家の当主に似合ず、家というような観念は少く、本来無東西というような、冷めたい人間孤独の相を凝視しつづけていた人です。ですから、案外、文学なんかも、僕よりも深く理解しているところがあったかも知れない。ですから、一家の古傷のような小さな秘密など問題にしていなかったのも当然ですよ。