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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

たまたま、こういう事件が起って、それが凄く重大なことになっただけで、こんな事件でも起らなければ、とるにも足らないことではありませんか」

巨勢博士はいささかてれながら、

「そうですなア。然し、なんですよ、それは僕みたいな氏も富もない家庭の出来事なら、仰言るようなものでしょうけど、まったく神山東洋氏のユスリのタネになるのも道理、当家の財産を分配する、そういう事態の起る場合を想像すると、この分配の金額は、とるにも足らないというわけに行かないだろうと思いますが」

「神山東洋が訴訟を起すというなら、そしてそれが正当なものなら、僕はユスリには応じぬ代りに、海老塚には遺産を分配してやりますよ。僕は物質よりも、正義の方の味方をしますよ」

一馬は息をはずませて叫ぶように言い切った。

ところが巨勢博士は、私のことまで疑っているのである。

「ねえ、先生」

彼は私の部屋を訪れて、私と京子の顔をニヤニヤ眺めながら、

「歌川先生はああいうけど、歌川先生のことは別として、もしや、先生は、海老塚さんが当家の孫だという一件を知ってたんじゃ、ありませんか。ともかくですな。ユスリの種になってるほどのことだから、お梶様に近い人、女中とか、それから加代子さん。