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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

世間なんか、もう眼中に入れたくないのだね。それが処女の生一本の情熱で思い決しているのだから、僕は打たれた。死んでもいいと思った。崇高そのものですよ。君は信じられないかね。これ以上の崇高はないですよ。なんと云ったって、君、加代子は世間を捨てているんだからな。罪を知らないのじゃないのだ。加代子は聡明そのものだ。なんでも知っている。神のように知っている。見抜いているのだ。自分の宿命だって見抜いているさ。僕はふらふらした。ねえ、そうだろう。もし神様にやさしくだかれて悪事をささやかれたら、いったい人はどうなると思う。僕は然し危いところで思いとどまった。からだにふれてはならぬ。たとえ死んでも。僕は神様を犯せない。いや、然し、犯さずにいられそうもない気がする。加代子は僕の手を握りしめた。僕たちは接吻した。冷めたい悲しい接吻だったが、二人はまるで水のようにただ一つのものであったと言う事ができる。崇厳そのものであった。悲痛そのものだったよ。加代子は言うのだ。結婚しよう。神様は必ず許してくれる。そして、死にましょう、とね。僕は然し死ねない。僕はそんなに単純じゃない。