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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

僕はアリバイを意識して生活しているわけじゃアないから。尤も、こんな事件が起っていることを知っていりゃ、ちゃんとアリバイをつくっておいたでしょうがね」

カングリ警部はうなずいて、

「ところで、三宅さん、一番バスに、どなたか御存知の方が乗合わしていましたか」

「いいえ、僕はこの村に顔見知りもありませんから、それに僕は、人の顔など見ないタチだから、気がつきませんよ」

「海老塚さんは御一緒ではなかったのですか」

「一緒ではありません」

と木ベエが答えた。

「すると、二番バスには矢代夫人、神山夫人、諸井さん。海老塚さんは?」

海老塚は、何をツマラヌことを、という顔付で、それでも返事だけはした。

「僕は三番です」

「三番は何時ですか」

海老塚が答えないので、警部はバスの発車時刻表をとりだした。時刻表は次のようなものであった。

時刻表の画像

「海老塚さんは、十二時四十分発、午後二時三十分N町着、なるほど」

カングリ警部は心得たもの、ヒネクレ医者との問答を省略して、今度は一馬に、

「歌川さんはF町へ行かれたのでしたね」

「そうです。F町から又一里ほど山奥の親戚へ行ったのです。始発で出発して終発で帰りましたが、歩行の時間がありますから、午後零時半ごろ親戚へついて、三時すぎにはそこを出発しました」