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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

諸井看護婦は二番でたって十二時三十分にN町につき、バスの終点の前にある薬屋で薬を仕入れて、二時三十分発のバスで帰ってきたというが、バスがつくと先ず薬屋へ註文書をとどけておいて、町をぶらつき、二時半の発車前に戻ってきて、出来ている薬の包みを受けとってバスにのって帰ってきた。その中間の二時間は、ただ町をぶらついていたというだけで、アリバイはなかった。

最もひどいのは木ベエだ。始発でたつとN町へつくのが十時三十分。それから終発の五時まで、ただブラブラしていたというだけであるから、

「然し、三宅さん、六時間半ですよ。どこか一ヶ所ぐらい、あなたの顔を先方が見覚えているというような交渉ぐらい有りそうなものじゃありませんか」

「それは常識論ですよ。人間には色々の性癖があるものですから、型通りに行くものじゃアありません。知らない土地というものは、ただ同じような道と家と森と寺の記憶があるばかり、それがどの方角か、どの道の次にどの道があるか、全然意識はバラバラで統一された全景がないものです。僕はそのバラバラの諸方の位置に、散歩をたのしんでいただけで、その間、人間との交渉がなかったとしても、仕方がない。