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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

一馬夫妻と私は巨勢博士の部屋をたたいた。

博士はトランクをひっかき廻している最中であったが、我々の話をきいても、一向に驚きもせず、

「ハア、そうですか」

益々多忙にトランクをひっかき廻している。そして彼が何物か見つけだして、ようやくホッとしたのを見ると、何のことはない、ただ一足の靴下にすぎないのである。

「何だい、その靴下は? 何かの証拠物件かい」

とイヤ味を云ってやると、エヘヘと笑って、

「いえ、あした、旅行しますもんで。ついでに、東京へでて、あの子を訪ねるコンタンなもんで、あの子はキレイ好きですから、靴下だけは何です、僕はいつも彼女の命令によって心掛けているんでさア」

と、嬉しそうである。

「敗北遁走というわけかい」

「いいえ、勝利にいたる道でさア」

と、一つ息ごんでみせて、

「どうも、面目ありません。タマツキの賭なんかに夢中になっちゃって、まったく、失敗しましたよ。しかし、なんです。犯人は逃しゃしません。何ですって? ああ、八月九日、宿命の日か。八月九日までには帰ってきますが、歌川先生御夫妻は呉々も御注意下さい。部屋の鍵は紐でグルグル巻きに結びつけるのも結構です。