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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

食べ物にも御注意下さい。それから、昼も、一人歩きはつつしんで、なるべく数人かたまって暮らして下さることでさア。要心第一。人を見たら、人殺しと思うことですな」

巨勢博士は今度は新しいネクタイをとりだして、思わずニコニコしている。

「なんのために、旅行にでるのさ」

私が、こうきくと、

「物的証拠を探しに、です」

「証拠は、ここには、ないのかね」

「ハア、ありません。ただ、犯人は、時間と空間の関係に、ぬきさしならぬ姿を現しているのですがね。それから、心理に於いて。然し、物的証拠がないのですよ。そいつを探しに、でかけるわけでさア」

「じゃア、君は、犯人を知っているのか」

「ハア、それはもう、どうしても、その御仁でなければならないという、こいつはハッキリしたもんでさア。けれども、なんしろ、時間と空間の算式なもんで、こいつは法廷へもちだす証拠にはなりかねますんで、然し、なんでさア、いよいよ証拠がなきゃ、時間と空間の算式だけで、法廷へもちだしまさア。ヤケでさアね。散々なめられちゃって、まったく、くさったな」

と、頭をかかえた。

「どこへ行くのだい」

「方々ですよ。天下隈なく、どこまでだって、こうなりゃ、意地とヤケクソで、水の中でも、くぐりまさア」