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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

次に一馬さんはF町の親戚へ行っておられて、これも亦、ほぼアリバイに疑いはないようですな。さて、あとに残りました、御五ツ方」

と、神山はちょッとてれくさそうに、ニヤニヤした。

「これは、又、おどろいたね。僕も亦、容疑者のクチかい」

と、丹後弓彦がねむそうな目を案外キリッと神山に向けて、

「僕は君、ブナの森からブラリブラリと、十時五十分のバスにはちゃんと街道へでて、乗りこんでいるぜ」

「けれども、失礼ですが、丹後先生、先生のブラリブラリは、全然御時間の観念がお有りではないようですからな。先生はたしか時計をお持ちでないようですが、拝察するに、ここ十年か十五年間、先生は時計を所持なさらずに、生活していらっしゃるんじゃありませんか。先生は十時五十分のおつもりで、十二時二十分のバスかも知れませんぜ。実は証拠があるんでさア。この村の者で、十二時二十分のバスに先生と乗り合した者がいて、あとは先生の仰言る通り、街道のマンナカに手をふりあげて乗りこんでいらした、それは先生の仰言る通りだと申していますよ。これは、もとより、カングリ警部もちゃんと知ってることなんですよ。あのカングリ先生が我々を取り調べにくる時は、実はもう、我々の答える以上に調べた上で、顔つきかなんか、見にくるだけのことなんです。