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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

それとも、宇津木さんのようなお方は、年中、そのようなものをケイタイしておられるものですか」

「それこそ、淑女のタシナミさ。昔から言ってらアね。シキイをまたげば、七人の敵あり。天下に、これほど、大切なタシナミはないのさ。警部はまったく人間性を劣情でしか理解できないのだなア」

「イヤ、どうも、恐縮です」

と、カングリ警部は怒りもせず、ニヤニヤと、ピカ一にひとつ、頭を下げた。

食事を終って、一同が広間へ立った。

広間の中央柱に、紙が一枚、はりつけられている。

「おや、何だろう」

それを見つけて、まっさきにのぞいて見たのは、丹後であった。

「やれやれ。又、現れたね。八月九日、宿命の日、か。ちかごろハヤリのポスターだね」

丹後はてんで気にかけずシャレのめしたが、我々は驚いた。

一馬は紙を睨んで、立ちすくみ、ひきつるように、顔色が変ってしまった。無理からぬことである。海老塚が逮捕されているうちは、と、彼は内々心に安んじていた筈だ。まさか海老塚の魂が、火の玉式にころがりこんで、紙をはりつけて、どこかの隅に息を殺しているわけもない。

ふと、私が気がつくと、カングリ警部が火をはくような鋭い目玉で人々の顔を一つずつ、喰込むように睨みつけているのを認めた。