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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

然し我々は彼の探偵手腕を絶対的に認めるから、この不勉強の怠け者を敢て博士と尊称することにしているが、然し奴めは肩のこる学問は知らない代りに、下らぬものなら、講釈本、落語全集等の高級品から下は猥本、映画雑誌、相撲の番付、そういうものは徹夜で耽読するから、下らぬものならなんでも知らぬというものがない。

私が出かけて行って手紙を見せて応援をたのむと、

「そうですか、避暑はいいな。料理も食えるし、酒ものめるか。然し、今晩はダメですよ」

「なぜ」

「つらいな、開き直られちゃ。ちょッとお耳を拝借。ア・イ・ビ・キ。分りましたか」

「博士も亦然りか。どうせ相手はパンパンだろう」

「やいちゃ、ヤボです。先生。明日の夜行で行きます。一足お先きに。あの子もつれて行きたいな」

「つれて来たまえ、遠慮なく」

「ダメ、ダメ。神聖なる処女は虎狼の中へ連れて行くわけに行かないです」

「博士は少女趣味かい。やれやれ。俺はトンマな趣味の奴に憑かれているんだ」

私は手紙の指定通り出発した。

汽車はこの節としては大名旅行で、腰かけることができず、眠ることができず、便所へ行くことができない程度の穏やかな旅行であった。