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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

N町へ降りると、思いがけない人物が乗り合せていたのだ。私は呼びかけられて驚いたが、神山東洋とその奥さんの木曾乃さんだ。

神山夫妻は戦争中、ちょッとばかり山へ顔を見せたことがあるが、弁護士で、八九年前まで歌川多門の秘書をやっていた男だ。木曾乃は元は新橋の芸者で、落籍されて多門の妾であったが、東洋と密通し、そのころから秘書をやめたが、時々訪ねてくるのだそうだ。弁護士という頭脳的な商売どころか暴力団のような見るからガッシリ腕ッ節の強そうな大男で、歌川家ではみんなに毛嫌いされて出てゆけがしに扱われ、どっちを向いても、女中にまで渋い顔を見せつけられ、誰に話しかけても、誰も返事もしないのである。

「これはお京さんも。そうそう、矢代先生と御結婚の由、承っていましたよ。先生も見かけによらない。そうなんだな、文士なんて、おとなしそうで、やっぱりその道は猛者ぞろいなんだな。恐れ入りました。今後よろしく御指南願いますよ」

私は返事もしなかったが、

「矢代先生も歌川さんでしょう。お伴いたしましょう」

「あなたも歌川さんですか」

「ハア、何ですか、招待状が参りましたもんでね。珍らしいことがあるものですよ」