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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「今きたばかりですよ。室内からの物音に、外から梯子をかけて、窓を叩きわって、窓の鍵を外して、とびこんできたのです。何事があったのですか」

あやか夫人は一馬の屍体を抱き起して膝にのせたが、もう手応えがないので、祈るように二人を見上げた。カングリ警部は首を横にふった。夫人はウツロの目をむなしく戻したが、やがて一馬の屍体を膝から下して、寝台に手をかけて立ち上り、考え考え佇みながら、寝台からデスクへ、椅子へ、何かに寄りそいながら窓まで歩いて行った。破れた窓から、涼しい風が吹いてくる。自然に気持が落付いてきたようであった。

夜が明けそめている。あやか夫人は戻ってきて、寝台に腰を下した。

「電燈がついていましたか」

「いいえ、私たちが飛びこんできて、つけたのです」

あやか夫人は、うなずいた。

「主人はおそくまで起きていました。私がいつ目をさましても、電燈がついていて、主人は机に向って、何かしていました。そのうち、ふと目をさました時には、暗闇でした。私は誰かに首を押しつけられていたのです。びっくりして起きようとしますと、主人の声で、僕だよ、と、手をゆるめてくれましたが、そのときは、殺意を感じるほどの強い力ではありませんので、何が何やら分らぬ気持で、びっくりして半身を起しただけです。