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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「現場をみだすな。スイッチを探して、電燈をつけろ」

カングリ警部の命をうけて、八丁鼻は電燈をつけた。

一馬を抱き起してみると、すでに、苦悶の果、息絶えている。デスクに飲みのこしたコップの水があり、白色の粉末が散りこぼれている。青酸加里のようであった。

あやか夫人の口からも血が流れていた。一馬を横手へ寄せて、あやか夫人をだき起そうとすると、夫人は目をあけた。

「どうしましたか」

夫人の答えはない。ボンヤリと目をあいているうちに、ふと意識がもどったらしい。悲痛の色を目に宿して、首をうごかそうとした。二人が寄りそって抱きおこすと、口から流れる血に気付いて、絶望的な戦慄をあらわしたが、うがいをさせ、手当を施してみると、舌を噛んでいるだけで、大きな負傷ではなかった。

あやか夫人は全く我にかえって襟をかき合せたが、横手に寄せてある一馬の屍体に気づくと、小さな、絶望の叫びをあげた。

「何事が起ったのですか。思い起して下さい」

と、カングリ警部は鋭く夫人を見つめて返答を待ったが、夫人はしばらくそれを同じような鋭さで見返しているばかりであった。

「あなた方、いつ、いらしたの」