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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

主人は海老塚さんを犯人と信じておりましたから、あの方が捕われてからは安堵しておりましたのです。ですから、あのハリ紙のショックはひどすぎたのです。不安と恐怖に、私がさきに眠ることさえ心細い有様でしたが、私がいつ目をさましても、主人は机に向って、考えこんでいたのでした」

カングリ警部はうなずいた。そして彼は改めて一馬の屍体をしらべはじめた。顔や手にあやか夫人の抵抗をうけて掻きむしられた傷があり、彼のパジャマもひきむしられ、胸のボタンがとんでいた。

「危いところでしたな」

と調べ終ってカングリ警部は云った。

「あなたは気絶なさったから、よかったのです。抵抗をつづけていたら、ふたたび生きかえることはできなかったでしょう。あなたが死んだものとみて、御主人は覚悟の自殺をされたのです」

「なぜですか」

「お気の毒ですが、これまでの惨劇はすべて御主人が犯人でした。我々には分っていたのです。ただ、物的証拠がなかったために、逮捕ができなかったのでした」

「ちがいます」

あやか夫人は叫んだ。

「私は存じております。昨夜、私どもが食堂へ参ります時には、柱のハリ紙はなかったのです。そのとき私は何気なく柱を見た覚えがありますから、間違いはございません。