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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

そして主人は一しょに食堂へはいりまして、食事の終るまで一歩も席を離れたことはございません」

「ごもっともです」

とカングリ警部はうなずいて、困ったような、くすぐったい面持であったが、

「実はあのハリ紙は私どもが致したのです。八月九日、宿命の日。つまり、犯人に対する宿命の日。この皮肉は、犯人にだけは、通じた筈です」

呆然たるあやか夫人をシリ目に、カングリ警部はいささか得意の色、やがて八丁鼻に命じて、はじめて扉をあけさせた。

本署から鑑識の一行が、自動車をいそがせて到着したのが、十時半ごろ。十一時ちょッとすぎるころ、巨勢博士が戻ってきた。

ついに歌川家滅亡、という意外な結果に、私が広間にボンヤリしていると、巨勢博士は食堂の出入口から、とびこんできた。

「道で警察の自動車が追いぬきやがったもんで、それから盲メッポウ駈けだしたんですけど、この節は運動不足で」

と息をきらしているところへ、二階からカングリ警部の一行が降りてきた。

「やア、巨勢さん、お帰りですか。一足おくれましたな。お留守のうちに、悲劇はついに終りましたよ」

「終った? すると、歌川先生が殺されましたか」