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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「いや、歌川一馬氏は、自殺しました」

巨勢博士の顔色が変った。虚脱にも近い苦悶と落胆の色であった。

「ヤ、おそかったか! 僕は、バカだ。不眠、不休。然し、ああ、一生の不覚だった!」

絶望的な悔いの苦痛がきざまれた。カングリ警部は笑いだして、

「ひどくお忙しかった様子ですね。不眠不休ですか。お気の毒です。然し、私どもも、昨夜は不眠でしたよ。然し、ともかく、落ちつくところへ落ちついたようです」

巨勢博士の全身に、すさまじい怒りがこもった。

「畜生め! もう、逃さない。ああ、然し、手おくれだった! 然し、仕方がなかったのです。今さら面目もありませんが、ツラの皮だけはヒンむいてやります」

「誰のツラの皮をヒンむくのですか」

「犯人の、です」

「歌川一馬氏は自殺しましたよ」

カングリ警部は涼しい顔で答えたが、巨勢博士はそれに頓着していなかった。

「歌川先生は、毒薬でなくなられたのですね」

「左様、青酸加里です」

「遺書はありますか」

「いいえ、然し、何か、一晩中、書いては消し、書いては消したものがあります。ひどく消しつぶして判読できませんが、あるいは遺書をかくつもりだったかも知れません。