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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

演技は真に迫っております。然し、皆さん、もう一度、当夜の状況を、皆様自身の念頭に思い描いていただきたいと思います。即ち、この部屋には、人見さん、矢代さん、三宅さん、一馬先生、神山さん、私、これだけの男が揃い、この男は全部あやか夫人の味方たる人、土居画伯の暴力に対してあやか夫人をまもり闘うに相違ない人々であります。現にその前夜も、あやか夫人に向い土居画伯が暴力を揮いかけたとき、人見さん矢代さん神山さんらが奮然と土居画伯に立ち向って、あやか夫人を助けたではありませんか。その晩とても、そうです。あまりに事が突発的で、我々の予期せざるうち、アッと思うまにあやか夫人は殴られ、フリ廻され、投げとばされておりました。然し我々は我にかえるや、当然土居画伯に躍りかかって彼を取り押え、距てました。それで事は済んだと我々は思ったのです。すると又、距てられたまま二言三言言い争ったと思うと、我々の予期せざるうち、再び突如として土居画伯はあやか夫人に飛びかかり、あやか夫人は身をひるがえすや、脱兎の如く戸外を指して逃げ去りました。即ち、皆さん、私が心理の足跡とよぶのは、ここであります。