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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
なぜならば、あやか夫人の最大の味方たる者の大部分がその場に居合しているのです。戸外には何もありませぬ。誰も味方はおりませぬ。戸外を廻って母屋へ逃げても、母屋の男は老いはてた病人と老いはてた下男の外にはおりませぬ。村の人家は一里も離れ、駐在所も亦一里離れておるのであります。我々が土地不案内な夜道などで、深夜にオイハギに出会ったような場合でしたら、我々はオイハギをのがれて暗闇に向ってメクラ滅法逃げだすことは自然であるかも知れません。然し、あの晩の如く、現に味方の大部分がその場に居合わす場合に、その味方の方へ逃げこまずに、味方の居るべき筈のない暗闇の戸外へ向って逃げ去ることが自然でありましょうか。自ら死地へ赴くことではありませんか。我々の目の前ですら、フリ廻されて投げつけられ、衣服はさけて膝から血が流れるほどの暴行を受けているのに、味方の中へ逃げこまずに、暗闇の戸外へ逃げ去るなどとは、人間の心理に於て、およそ有りうべからざる奇怪事であります。即ち、そこには、どうしても、人のいない戸外へ向って逃げねばならなかった必然性がなければならぬ。そうせざるを得なかった理由がなければならぬ」