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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

ところが、この日は、言葉の上の敵意の激しさでは、そして又、言葉にこもる悪意の激しさでは、この日にまさるものはない。それにも拘らず、土居画伯は平然として、敢てあやか夫人にとびかからない。これは、いったい、なぜだろう? そう思った時、あの格闘の激しさの不思議さが、はじめて、不思議なものとして私の意識によみがえり、それにつづいて、あの心理の足跡、あやか夫人が戸外の暗闇へ逃げ去ったという有りうべからざる不自然さが、ようやく目に映じてきたのでありました。私が御両名の周到きわまるカラクリを見破ることができたのは、ようやく、その時でありました。あまりにも、おそすぎました。然し、又、あまりにも巧みな演技、あまりにも、巧みな計画ではありませんか」

ピカ一は相変らず、平然と沈黙していた。その沈黙は必ずしも不自然ではなかった。心理の足跡とはいえ、尚それが決定的な説得力には、どこか不足なものがあった。我々のその思いと、ピカ一の平然たる顔と、それは奇妙に調和のとれた、要するに、変に間の抜けた痴呆状態をつくりだしているのであった。

巨勢博士は語りつづけた。

「さて、五回目の多門、加代子毒殺事件にうつります。